◆入院日数の計算方法が医療保険と厚労省で異なる

 医療保険で60日型にするか120日型にするか検討するときに、平均入院日数を基準に考える方が結構います。保険会社のHPやパンフレットにも、平均入院日数を基準に考えろ、と言わんばかりに掲載されているので無理もありません。

 しかし、入院日数の計算方法が、医療保険と平均入院日数を算出している厚労省とで異なっているという事実はあまり知られていません。医療保険と厚労省の計算方法の違いを補正していくと本当の平均入院日数が明らかになります。

 補正前の平成23年の平均入院日数は32.8日です。補正後の平均入院日数はいったい何日間になるのでしょうか。

 
◆入院日数の計算方法の違いとは

 まず、保険会社と厚労省の入院日数の計算方法の違いを明らかにしましょう。

 厚労省は、どのような形態であれ、入院している病院から出て行ったら『退院』とします。たとえ他の病院への転院だとしても、退院後数日で再入院しても、(ちなみに死亡しても、)退院なのです。そして、退院までの入院期間から平均入院日数を出すのです。

 一方の医療保険は、他の病院への転院や退院後180日以内の再入院は、連続する1回の入院として計算します。

 …もうお分かりですね。

 転院や再入院時の平均入院日数の計算基準は、厚労省は緩く、医療保険は厳しいのです。厳しい条件で計算された平均入院日数を基準にして、緩い条件の医療保険を選ぶなら気持ちは分かります。しかし、その逆はないでしょう。


◆転院患者の入院日数を加算

 転院患者は、退院患者のわずか5%と少なめです。しかし、転院患者のうち「これで2回以上連続での転院となる患者」は28%にも上ります。

 そして、転院患者の平均入院日数が大変長い点にも注意が必要です。平均入院日数は、転院していく患者で114日、転院してきた患者で159日です。

 そのため、転院していく患者の場合、転院先の病院においては「転院してきた患者」という扱いなので、転院先で平均159日入院するであろうことが分かります。

 しかし、平均入院日数の算出においては、この159日の入院と転院前の入院は別々の入院として計算されるのです。これは、転院してきた患者についても同様です。

 以上を踏まえ、平均入院日数(総入院日数÷総退院患者数)に対して、次の要因を加味して算出し直します。

 1.転院していく患者数×159日の入院日数を、総入院日数にプラスする。

 2.転院してきた患者数×114日の入院日数を、総入院日数にプラスする。

 3.転院していく患者と転院してきた患者のそれぞれ28%は、3つ目の病院における入院で136日(114日と159日の中間値)入院する。

 するとどうでしょう。平均入院日数は、なんと「51日」に膨れ上がるのです。


◆一時退院患者の入院日数を加算

 次は、一時的な退院患者の実質的な入院日数を考えてみましょう。

 退院患者の再入院率を示す統計は厚労省の「患者調査」には出てきません。ですので、同省の「再入院の状況」(平成23年)を用いて試算します。この「再入院の状況」では、DPC参加病院とDPC準備病院における1年間の退院患者についての再入院率が記載されています。

 ちなみにDPCとは、傷病ごとに医療費が決まっている「定額制医療」のことです。では、DPCに参加前の準備病院の再入院率を見てみましょう。

 この調査では、半年以内に複数回退院した患者についても調査されており、また、2回目以降の退院が同一疾患であるか否かも調査されています。この調査によれば「平成18~22年度新規DPC準備病院」において、半年以内に同一疾患により再入院している患者は概ね9%です。

 さて、この9%を踏まえ、退院後の行先が「家庭」となっている退院患者の9%が再入院し、再度平均入院日数分だけ入院すると考え、平均入院日数を計算し直します。すると、平均入院日数は、2日間増加します。


◆本当の平均入院日数は驚きの53日!!

 補正前の平均入院日数は約33日でした。それが今や、転院による加算で18日間のプラス、一時退院による加算で2日間のプラスで、53日間にまで膨れ上がっています。

 『平均入院日数の2倍ぐらい保障しておけば大丈夫だろう』と思って60日型を選んだ人にとっては特に衝撃的だと思います。

 このように、実態に近い平均入院日数の計算なんて誰でもできるのです。しかし、保険会社は、補正前の平均入院日数を提示して『60日型がイイですよ』と勧めているように思えます。

 おそらく保険会社が60日型を勧めるのは、長期入院患者が増えても60日で保障を打ち切れるため、リスクが少なくて売りやすいからでしょう。保険料も安く見せられますし。しかし、だからといって実態に近い平均入院日数を提示しなくてよい理由にはなりません。

 生涯で100万円前後もの大金を支払う医療保険だというのに、正直な情報を明かさない保険会社の態度に憤りすら覚えます。

 正しい判断は、正しい情報なくして下せません。平均入院日数は33日間ではなく、少なくとも53日間にはなります。正しい情報を持って決断して下さい。

 まぁ個人的には、そもそも平均入院日数ではなく、平均入院日数で医療保険を選ぶなという記事で書いたとおり、割合で捉えて、60日型なら何%の入院に対応できるのか、61日以上の入院への対応はどうするのか考えて決断してもらいたいところです。


参考資料:平成23年患者調査(厚労省)
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