入院リスクの高い県民は病弱なのか!?で、考察したとおり、県民10万人当たりの入院患者数と通院患者数の相関は低いことが分かりました。

 入院患者が多い地域は、病弱な人が多いわけではないのです。患者側に主だった原因がないとすれば、考えられるのは病院側の原因です。

 病院も営利企業としての側面があることを踏まえると、病床(入院ベッド)に空きがある限り、患者を詰め込みそうです。


◆病床数が多いと、入院患者数も多い

 まずは、都道府県民10万人当たりの病床数と、入院患者数の相関関係を示しましょう。

bedtokanjya.png


 綺麗な形の散布図です。相関係数だと0.99です。

 相関係数は1に近いほど正の相関、つまり一方の値が増加すると、もう一方の値も増加する関係性を有すると言えます。

 よって、病床数と入院患者数は極めて高い正の相関を示しています。


◆高い相関の原因は何だ

 これほど高い相関を示す原因は何でしょうか。こんな綺麗な散布図は、なかなかお目にかかれません。(ちなみに一番右端は高知県)

 原因は2つ考えられます。

 原因の1つ目は、入院患者数と病床数に対して同じ割合で影響を与える他の原因です。

 例えば、高齢化の影響です。入院患者数が多い地域では、高齢化が進んでいるので、入院患者数も病床数も多いのかもしれない。

 しかし、高齢化率と入院患者数の相関は0.62で、そこまで高くありません。

 これほど綺麗な相関を説明できる他の原因があるとは考えにくいのです。

 原因の2つ目は、入院患者という需要と、病床という供給とが、絶妙にマッチしている可能性です。

 しかし、病院側にそんな柔軟で効率的な運営が出来るでしょうか。

 それに、需要と供給がマッチしているなら、多くの都道府県において基準病床数(後述)を既存病床数が20%も上回るはずはないですし、まして50%に達するなんておかしいでしょう。

 平たく言えば、需要と供給がマッチしているなら、各都道府県に必要な理想的な病床数を厚労省が計算しても、理想と現実で大きなギャップが生まれるハズはないのです。

 つまり、この高い相関の原因は供給過多ではないのか、と私は思うわけです。

 多過ぎる病床によって、入院患者が生産されている可能性を考えなくてはなりません。


◆基準病床数とは

 厚労省では、各地域に相応しい病床数を基準病床数として設定するよう都道府県に指導しています。

 この基準病床数は、各地域の年齢別人口や病床利用率などを基に全国統一の計算式に基づいて算出されます。

 基準病床数制度を通じ、病床過剰地域での増床を禁止して、病床不足地域への病床移転を促しているのです。

 もちろん、ほとんどの都道府県で基準病床数よりも既存の病床数のほうが多い状況です。


◆既存病床数が多いと、入院患者も多い

 さて、既存病床数の過剰割合と、入院患者数の関係を見てみましょう。(ちなみに右端上が高知県、右端下が徳島県)

kajyotokanjya.png


 ご覧のように、正の相関が見て取れます。相関係数は0.71ですので、それなりに高い相関関係があります。

 これはつまり、病床の供給が過剰であれば過剰であるほど、入院患者が多いことを意味します。(または第3の要因があるか、もしくは入院患者が多いと病床が過剰になるか、を意味する)


◆病床が過剰なのに、空床率は高くない

 そして、普通に考えれば、病床が過剰であるほど使用されていない病床、つまり空床率は高いはずです。

 しかし、病床が過剰な県も、過剰でない県も、病床の85%前後が使用されているのです。

 実際、病床が過剰な割合と空床率との相関は0.37と低く、病床が過剰でも空床率が高いとは言えません。

 つまり、病床が過剰なハズなのに、“なぜか”病床は使用されているのです。

 ここまでくると、病院は、無駄に多過ぎる病床に患者を詰め込んで、収益を得ているように疑わざるを得ません。


◆きっと病院だってお金が欲しいんだ

 もし、あなたが空き病床を多く抱える赤字病院の経営者ならどうしますか。

 空き病床は何の利益も生み出しません。そうなると、通院治療で済む患者を入院にシフトしたり、入院期間を延ばすインセンティブが働くはずです。

 もちろん余計な医師や看護師を解雇して、病床を廃止するスリム化の道もあります。しかし、痛みを伴う改革は最終手段とされるのが世の常です。

 
参考資料:入院患者数につき、平成23年患者調査(厚労省)。ただし、宮城県、福島県は、平成20年患者調査。高齢化率につき、平成23年10月人口推計(総務省)。ただし、宮城県、福島県は平成20年10月人口推計。人口10万対病床数につき、平成23年医療施設(静態・動態)調査(厚労省)。基準病床数、既存病床数につき、平成23年版厚生労働白書。

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